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続 江戸の坂東京の坂 [書籍他]

 予想以上に読みやすい一冊。

続 江戸の坂東京の坂 (中公文庫)

続 江戸の坂東京の坂 (中公文庫)

  • 作者: 横関 英一
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 1982/02/10
  • メディア: 文庫

 何故「続」からか?と言うのは例によって古本屋の棚から安い文庫本を見繕って来るから、ちゃんと系統だって読書するなら前作も読まないとダメだけどそれはAmazonで1円古本を拾ってくるしかないか。もう私の様な浅学の徒ですらタイトルだけは知っている一冊で出版当時は坂道ブームを巻き起こした一冊だそうな、今日その辺の坂にでも名前と由来を書いた札が立っているのも本書のお陰なのだろうか?

 何が読みやすいか?と言うのは、先ず昭和50年当時の地番表示に基づいているので平成の世になるともう整合性が取りようも無いのですよ。六本木交差点の向こう側が龍土町とか言われても私が港区の住所表示に思い至る様になった頃にはもう全て六本木ですからね。それと「昔の地名とのつながりのない地名ほど、さびしい悲しいものはない。」(148ページ)とある通り、もう自治体の合併だのなんだで「希望ヶ丘」だの「平和通り」なんぞには歴史的な地名と縁も所縁もありはしない。

 本書ではすれ違うのもやっとだった坂が拡幅で名前の由来が無くなってしまった、何て書いてありますが「赤坂の霊南坂谷町に下る雁木坂」(51ページ)界隈なんて30年前に森ビルがアークヒルズを再開発した時に山口百恵と三浦友和が結婚式を挙げた霊南坂協会もろとも跡形も無くなった様な?その後も森ビルは六本木だ虎の門だと町単位で更地にして再開発しているので今となっては本書を含めた文献を辿るしかないな。


 先日車を運転中に例によってTBSラジオを聞きっぱなしなのですが「伊集院光とらじおと」で、日本坂道学会(会長山野勝氏・副会長タモリ氏)が選んだ良い坂50を伊集院光氏が廻ってダイエットすると言う企画をやっていて坂道も横関氏の御尽力でブームどころか定着したなと思ったり。ラジオの企画では文京区の坂を廻っていましたがあの界隈車の往来もままならない様な階段の坂が沢山有るものね

 本書は「続」なのですが江戸時代の古地図での地図の表記法から入るので、「続」なのに坂初心者でもすんなりと入っていける。古地図に関しても版元別にアレコレ特徴を記していて、昭和50年当時なら感心するだけなのですが今はその「尾張屋版切絵図」で画像検索すれば古書店がオリジナルサイズの図版をアップロードしていたりポータルサイトによっちゃ地図検索すると古地図表記出来るところも有るので、例え町ごと消滅してもWEB上で検証して楽しめるのよね。横関氏は古書店で現物を探したかもしれないが今では復刻版も手に入るし、これも横関氏の手柄か。

嘉永・慶応 新・江戸切絵図―時代小説の舞台を見に行く (古地図ライブラリー)

嘉永・慶応 新・江戸切絵図―時代小説の舞台を見に行く (古地図ライブラリー)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 人文社
  • 発売日: 2010/09
  • メディア: 大型本

 そんな効能も確かにある一冊ですが、本書で一番ためになるのは「坂」と言うお題に対して証拠を積み上げて特定するプロセスです。とにかく坂に対して複数の時代の古地図と現代の地図で検証して複数の文献で証拠固めをした上更に現地調査で見聞したり土地の古老に取材を試みて真相に近付くと言う、そこまで念入りに調べても決して断言調にならない。今時のWikipediaだ知恵袋だだけ検索して「ネットの真実」に到達する情報強者様は爪の垢でも煎じて飲んだ方が良いんじゃないかと。

 江戸の人の坂道命名法は割と簡単で、急だとか眺望が良いとか誰が住んでいたか位なんだとか。大田区田園調布にも「どりこの坂」があり、名前の由来はどりこのと言う戦前のアミノ酸栄養剤を発明した博士が坂の近くにすんでいたからだったので江戸も昭和も似た様なものだなと。六本木の芋洗い坂は芋を洗ったのではなく「芋」とは疱瘡の事だから、昔疱瘡神を祀っていたのが幕末に種痘が紹介されて疱瘡が無くなったから由来が判らなくなったと言うのはなるほどねえ。

 横関氏は都心の旧江戸市中の坂を研究されていたのですがお住まいは世田谷区奥沢だったそうで、奥沢神社前の名前の無い坂についても検証されていたり池上本門寺の車坂や馬込の鐙坂なんぞ江戸市中でもない城南エリアの坂が登場するのも個人的に親近感が。城東エリアはそもそも坂があまり無いので載らないのは仕方ないよ、城北エリアも登場しないか。

 それはあとがきで坂研究をライフワークとして続けてゆきたいと本書に記した翌年にお亡くなりになっているからで、もうちょっと長生きされていたら北区や板橋区辺りの坂も検証してくれた気がする。昔の時代考証と言うのは時代小説やらお芝居の脚本の間違いを指摘したりで書く方も読む方も真剣勝負だったので緻密に論考を組み立てるのだろうなと、上述日本坂道学会副会長のタモリ氏はブラタモリでお馴染みな理数系アプローチで坂を検証するのに対して横関氏は文系アプローチ、坂道マニアの古典中の古典ですから好きな人は当然読んでますよね?

江戸の坂 東京の坂(全) (ちくま学芸文庫)

江戸の坂 東京の坂(全) (ちくま学芸文庫)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2010/11/10
  • メディア: Kindle版


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