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貞観政要 [書籍他]

 元祖自己啓発本。これより古いのは聖書とバガヴァッド・ギーターくらいか?

貞観政要 (現代人の古典シリーズ 19)

貞観政要 (現代人の古典シリーズ 19)

  • 作者: 呉 兢
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1996/08/31
  • メディア: 単行本


 本気で読むなら明治書院の上下巻各8千円台の豪華本が有りますが、そこまで読む事無いかと。本書はその辺の経営者向けのより抜き本として適当なボリュームです。つか、この徳間書店の「現代人の古典シリーズ」はこれ以外にも中々良いラインナップですよ。以前「商家の家訓」も紹介したけど。

商家の家訓 (1973年)

商家の家訓 (1973年)

  • 作者: 吉田 豊
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1973
  • メディア: -


 「自己宣伝と古代中国知識人」と言う副題のついた「争名の賦」が面白そう。

争名の賦 (1978年)

争名の賦 (1978年)

  • 作者: 草森 紳一
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1978/03
  • メディア: -


 「争名の賦」じゃなくて「貞観政要」だけど、春秋時代の諸子百家と言えどデビューは役人に賄賂を渡して王様の前で「何某は大した人物です」とか吹聴して貰うBuzzマーケティングをしていた中国だけに「唐の太宗って言う皇帝は人物だね」と言う印象を与えようと言うバイアスは「貞観政要」でもやっぱり露骨なのでその辺は割り引いて読まないと。ただ、一般論として普通に有り難い教訓本になっています。

 天下統一を「覇道」、治世を「王道」なんて言いますが、太宗は正しく覇道の人です。軍人として隋を滅ぼし、父を高祖として大唐帝国初代皇帝に祭り上げた後、玄武門の変で兄と弟を殺害して二代目皇帝となっています。ところが皇帝になった後は「守成」と称して大唐帝国の栄華と繁栄を守る事に勢力を傾けるようになり、そこでの側近との問答集が「貞観政要」てわけ。

日蓮宗 現代宗教研究所 貞観政要巻第一〔▽二九頁〕 史臣呉競撰 君道第一 第三章
http://www.genshu.gr.jp/DPJ/database/bunken/syahon/jyokan.htm
>貞観十年、太宗、侍臣に謂ひて曰く、帝王の業、草創と守文と孰れか難き、と。尚書左僕射房玄齢対へて曰く、天地草昧にして、群雄競ひ起る。攻め破りて乃ち降し、戦ひ勝ちて乃ち剋つ。此に由りて之を言へば、草創を難しと為す、と。魏徴対へて曰く、帝王の起るや、必ず衰乱を承け、彼の昏狡を覆し、百姓、推すを楽しみ、四海、命に帰す。天授け人与ふ、乃ち難しと為さず。然れども既に得たるの後は、志趣驕逸す。百姓は静を欲すれども、徭役休まず。百姓凋残すれども、侈務息まず。国の衰弊は、恒に此に由りて起る。斯を以て言へば、守文は則ち難し、と。

>太宗曰く、玄齢は、昔、我に従つて天下を定め、備に艱苦を嘗め、万死を出でて一生に遇へり。草創の難きを見る所以なり。魏徴は、我と与に天下を安んじ、驕逸の端を生ぜば、必ず危亡の地を践まんことを慮る。守文の難きを見る所以なり。今、草創の難きは、既に以に往けり。守文の難きは、当に公等と之を慎まんことを思ふべし、と。


 と、「草創(創業)と守文(守成)と孰れか難き」と側近の房玄齢や魏徴に御下問しています。つまり創業(起業)は大変だけどもうそれは済んだ事だから、この先は代々続いてゆかねばならないのであるから守成の方が大変な問題である、と気を引き締めている訳です。「だから、二世・三世経営者はダメなのだ!」なんて言われても気にしない。守成の難しさは太宗が認めるところですからね。だからこそ跡取りは気持ちを引き締めて商売をしないと駄目なんだけど。


 日本経済新聞が「200年企業」なんて連載をしていますが、それを読むに「守成」の道はそれぞれで、本業を守り抜いた会社もあり、時勢に応じて扱い商品を変え続けた会社もあり、とそれぞれで、まあ運の部分が多いんじゃね?と言うか「天の刻・地の利・人の輪」をガッツリ活かした会社だけが生き延びているのかなと。まーその大唐帝國も建国300年弱で滅びるんですからね、と言うより太宗のセガレがヨメ(則天武后)の専横を許しちゃう時点でもうダメダメなんだがね。

 「平家物語」の国の住民としては「もののあはれ」を感じずにはいられませんが、そもそも子々孫々何代にも渡って繁栄を続けるなぞと言う事は特に現代はもう有り得ません、ニホンザルのボスよろしく「猛き者もつひには滅びぬ」で良いんじゃないの?短い春を謳歌すれば。太宗のように隋の煬帝やら秦の始皇帝の失敗に謙虚に学ぼうと言う気持ちが有れば自分の代は繁栄しますよ。その後は知らんけど、そこまでコントロールしようというのは一介の人間としての分を超えている気がします。

 「貞観政要」ではだんだんと生活が派手になる、民衆の声に耳を傾けなくなる、無駄な工事や戦争で国威をアピールしようとして却って国力を疲弊させる、と言うのが過去の歴代王朝での滅亡原因として挙げられています。その辺の企業でも同じような事して駄目になる例は多いので自分を戒める意味で面白い。地主さんなんぞは案外「貞観政要」の守成を実践していますよね。繁栄の源泉が何か判り易いからだろうけど。

 冒頭に「プロパガンダ」とは書きましたが中華伝統の「起居注(記録官)」がアレコレをありのままに記録しているので、娘の嫁入り支度を妹のそれの倍にしようとして魏徴に「娘より妹のほうが格が上なんだからそんな事しちゃ駄目でしょ」とかたしなめられたり、自分の暗殺未遂の咎で庶民格に落とされた長男坊の事を気にかけて、能力はあるが野心家タイプの次男坊を跡取りにすると長男坊や三男坊を殺すに違いないと心配して大人しいだけが取得の三男坊を後継者にしたりと親バカ全開なのが案外読み取る事が出来て面白いです。

 確か本書は昨年末に買ってなんとなくパラパラ読み進めてやっと読み終えたのですけど、一回通読したらオシマイじゃなくて折りに触れ手に乗って読み返す読み方が正しいのかなと。何せ「守成」と言うだけに過去の失敗に学ぼうと言う謙虚さは現代でも重要です。いや、中華統一なんつう偉業はそもそも凡俗には真似出来るところじゃないんだけどね。付箋つけてゴリゴリ暗記するように読むなら本書のようなダイジェスト版よりも明治書院刊の高額本がお奨め。「帝王学」と言っても気配り・謙虚さ・自戒が無いとすぐ離反を招くからえばってれば良い訳じゃないよ。

貞観政要 上 新釈漢文大系 (95)

貞観政要 上 新釈漢文大系 (95)

  • 作者: 原田 種成
  • 出版社/メーカー: 明治書院
  • 発売日: 1978/05
  • メディア: 単行本
貞観政要 下 新釈漢文大系 (96)

貞観政要 下 新釈漢文大系 (96)

  • 作者: 原田 種成
  • 出版社/メーカー: 明治書院
  • 発売日: 1979/01
  • メディア: 単行本


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